クラウドエンジニア人気が高まる中、情報システムのエンドユーザとして社内のIT化推進に取り組んでいる人の中からもクラウドエンジニアになりたい人が増えています。果たしてそれは可能なのでしょうか。
ITエンジニア職以外の人がクラウドエンジニアになる道は確かに厳しいものがありますが、決して「開かずの門」ではありません。ITエンジニア未経験の求人もあります。
そんなクラウドエンジニアですが、年々需要が高まっており、クラウドエンジニアの求人募集も増加傾向にあります。
ここではITエンジニア未経験者がクラウドエンジニアになるための道、知っておくべきスキルなどを解説します。
クラウドエンジニアになる道
クラウドエンジニアに求められるスキルは広く深く、三大プラットフォームと呼ばれるAWS、Azure、GCのクラウドサービスの専門知識も必要です。しかし基本的にはオンプレミス系情報システム開発におけるインフラ部分の設計・構築・運用、あるいはアプリケーション開発の専門知識が求められます。
このためITエンジニア未経験者がクラウドエンジニアになる常道は、次の経験を積むことになります。
勉強し、スキルを身に付ける
特にIT系プログラマーとしてのスキルや経験が無い場合、まずは基礎を身に付ける必要があります。独学で学ぶほか、専門学校に通うという選択肢もあります。
SEやプログラマーの経験を積む
スキルを身に付けたあと、SE(システムエンジニア)やプログラマーの経験を積むのもクラウドエンジニアになるためのキャリアパスになります。なお2021年現在、プログラマーからクラウドエンジニアを目指す場合は、以下のようなプログラミング経験が望ましい傾向にあると言われています。
- 開発言語はPython、PHP、Ruby、Java Script、HTML5など
- フレームワークはcakephp、Ruby on Rails、vue.jsなど
- 開発支援ツールはJenkins、chef、redmineなど
インフラエンジニアの経験を積む
インフラエンジニア(サーバーエンジニアとネットワークエンジニア)は、未経験からクラウドエンジニアを目指す上でメジャーなキャリアパスと言えます。インフラエンジニアとして、オンプレミス系情報システムのサーバ・OSを軸にネットワーク、ストレージなどインフラ部分の開発・運用に3年以上携われば、クラウドエンジニアになるための経験としては十分と言われます。
クラウドエンジニアになるために身に付けるべきスキル
ITエンジニア未経験者がどの道を歩んでクラウドエンジニアになるにせよ、その前に知っておくべきクラウドエンジニアのスキルとして、次が挙げられます。
クラウドの専門知識
クラウドはサーバ、ストレージ、ネットワーク、データベース、OSなどを仮想的に利用して情報システムを開発・運用する技術です。このためクラウド全般の専門知識、クラウド形態とクラウドサービスの種類に関する専門知識、サーバとネットワークを仮想化する専門知識などが必要になります。
ミドルウェアの専門知識
ミドルウェアとは、OSとアプリケーションソフトウェアの中間に位置し、様々なソフトウェアの共通機能を提供するソフトウェアのことです。OSが提供する機能よりも用途が限定されているので、「ある機能に特化してOSとアプリケーションを補助するソフトウェア」とされています。代表的なミドルウェアはWebサーバ、データーベースサーバ、アプリケーションサーバなどです。
プログラミングの専門知識
クラウド系情報システムの開発・運用の効率化を図るためには、プログラミングの専門知識が必要です。例えばクラウド系情報システムの場合、数十台から数百台のサーバが必要になります。これらのサーバを手作業で設定すると莫大な工数と時間がかかり、人為的ミスも発生しやすくなります。この問題を解決するために設定作業の自動化が必要で、そのためにサーバ設定のプログラム開発が必要になります。クラウドエンジニアの場合もプログラミングの専門知識が不可欠です。
オンプレミスの専門知識
オンプレミスからクラウドへの移行が進む中、クラウドエンジニアにはオンプレミス系情報システムのネットワーク、サーバ、OS、ミドルウェアなどの専門知識が不可欠です。オンプレミスの専門知識がなければシステム移行ができず、またシステム移行中にネットワーク、サーバ、ミドルウェアなどでトラブルが発生した際の復旧もできないからです。
クラウドエンジニアになるまでの流れ
ITエンジニア未経験からクラウドエンジニアになる勉強法は、前提としてインフラエンジニアの経験を積む場合とSEやプログラマーの経験を積む場合とでは若干異なります。まず入門コースとして、インフラエンジニア・SE・プログラマーになる上でほぼ共通の勉強法があります。
- 専門書を利用し独学で学ぶ
- 勉強会に参加する
- eラーニングを受講する
- 専門学校で学ぶ
これで一定レベル以上の専門知識を習得したら、次の専門コースへ進みましょう。なおeラーニングや専門学校の専門課程でも、下記の勉強をする方が多いです。
インフラエンジニアになるための勉強法
専門コースの勉強では、サーバ、OS、ネットワークに関する演習と資格取得の2つが常道で、転職時の評価も高いと言われています。
演習
演習では手を動かしての勉強が実践的で、これにはLinuxサーバ構築が最適と言われています。Linuxサーバ構築はパソコンがあれば無料で演習でき、転職時の面接でもLinuxサーバの構築経験を問われるケースが多いからです。
資格取得
インフラエンジニアになるための資格取得は、サーバ系の資格「LPIC level1/2」とネットワーク系の資格「CCNA」がメジャーコースと言われています。両方とも国際的な技能検定や資格なので、未経験からの転職時に有利になることがあります。
- LPIC(Linux技術者認定試験)……国際的NPOの「Linuxプロフェッショナル協会」が実施している技能検定。受験勉強の過程でLinux全般のスキルを習得できる
- CCNA……国際的なコンピュータネットワーク機器大手のシスコ社が認定しているプライベート資格。ネットワークエンジニアの入門資格とされている
SEやプログラマーとしてのスキルを高める勉強法
専門コースでの勉強では、プログラム開発言語の習得とポートフォリオ制作が常道で、転職時の評価も高い傾向にあります。またSEやプログラマーはプログラムの読み書きが必須スキルです。このためPHP、Ruby、Java Script、HTML5などのプログラム開発言語の最低1つを習得し、転職時に自分のスキルをアピールするためのポートフォリオとして、プログラム開発言語を使ってWebサイトを制作しておく必要があります。
ITエンジニア未経験の求人に応募する際のアピールポイント
取得した資格や習得したスキルをアピール
面接時に取得した資格や習得したスキルをアピールし、未経験ながらも即戦力としての実力を持っていることを面接員に印象付けましょう。
エンジニアとして学習意欲の高さをアピール
ITの世界は日進月歩で進化しています。このためエンジニアには、次々と登場してくる新技術を貪欲に吸収する学習意欲が求められます。未経験でエンジニアに挑戦しているその姿こそ、学習意欲の高さの証明に他なりません。このことを面接員に印象付けましょう。
これまで取り組んできたIT関連の実績をアピール
自分が現在または前の勤務先でITのエンドユーザとしてIT推進に取り組んできた実績をアピールしましょう。例えば、以下のような実績は、ITエンジニアの仕事とも大きな共通性があります。
- 外食産業……DX活用による業務効率化と労働生産性向上
- 不動産業……AI活用による市場データ分析精度の向上
- 製造業………IoT活用によるサプライチェーン最適化の推進
まとめ
学生と異なり、すでにビジネスパーソンとして活躍している人が、未経験からITエンジニアになる道は茨の道と言えるほど厳しいものがあるでしょう。それでも未経験からITエンジニアになり、さらに真の目的であるクラウドエンジニアになった人は少なくありません。まずは熱意と根気を持ってスキルを身に付けることが大切です。