クラウドエンジニアを名乗るだけなら資格は必要ありません。しかし取得する資格によってはクラウドエンジニアとしてのスキルの証明になり、転職時に有利に働く可能性があります。
また新たに資格を取得しようとする場合、受験勉強の過程でクラウド系情報システム開発の体系的な専門知識を学べることから、実務に役立つスキルも身に付く確率が高まります。
多くの企業がオンプレミスから、導入が簡単で初期費用が比較的安価なクラウドコンピューティングに移行していることから、クラウドエンジニアの需要が年々高まっており、クラウドエンジニアの求人募集も増加傾向にあります。
ここではクラウドエンジニアとして転職、あるいはクラウドエンジニアへの社内キャリアパスにおいて有利な資格と、資格選びの基準をご紹介します。
▼目次
転職や社内キャリアパスに有利なクラウドエンジニア資格
ひと口にクラウドエンジニア資格と言ってもさまざまな資格や技能検定があります。その中から本節では、クラウドサービス三大プラットフォーマ―の技能検定と、クラウドエンジニアとしての活躍が期待できる実践的な資格を紹介します。
AWS 認定ソリューションアーキテクト－アソシエイト
クラウドサービスプラットフォーマーのAWS（Amazon Web Services）が実施している技能検定です。
AWS 認定ソリューションアーキテクト－アソシエイトはクラウドの開発・提案を担当するクラウドエンジニア向けの検定です。市場評価も高く受験勉強の環境も整っているので、経験1～2年のクラウド初級者も挑戦しやすい技能検定と言われています。またこの検定に合格すれば、システム要件やユーザー企業の課題に基づいた最適なシステム開発をAWSプラットフォーム上で行えるスキルを持っている証明になります。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- AWS のテクノロジーを使用して安全で堅牢なアプリケーションを構築するための知識
- 顧客の要件に基づき、アーキテクチャ設計原則に沿ってソリューションを定義できるスキル
- プロジェクトのライフサイクルを通して、ベストプラクティスにもとづく実装ガイダンスを組織に提供できるスキル
Professional Cloud Architect
クラウドサービスプラットフォーマーのGoogle Cloudが実施している技能検定です。
Professional Cloud ArchitectはGoogle Cloudのアーキテクチャとインフラストラクチャのスキルを証明する検定です。合格すれば堅牢かつ安全でスケーラビリティと可用性が高いシステムを、ユーザー企業の事業目標に即してGoogle Cloudプラットフォーム上で開発、運用管理できるスキルを持っている証明になります。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- クラウドソリューションアーキテクチャの設計と計画
- クラウドソリューションインフラストラクチャの管理とプロビジョニング
- セキュリティとコンプライアンスに対応したシステム設計
- 技術プロセスやビジネスプロセスの分析と改善
- クラウドソリューションアーキテクチャ実装の管理
AZ-900:Microsoft Azure Fundamentals
クラウドサービスプラットフォーマーのMicrosoft Azureが実施している技能検定です。
AZ-900:Microsoft Azure FundamentalsはAzureプラットフォーム上でシステム開発を行うクラウドエンジニア初級者向けの検定です。合格すればクラウドの概念、Azureサービス、Azureワークロード、Azureのセキュリティとプライバシーポリシー、Azureの価格とサポートなどに関するスキルを持っている証明になります。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- クラウドの概念の説明
- Azureのコアサービスの説明
- Azureのコアソリューションと管理ツールを説明する
- 一般的なセキュリティおよびAzureのネットワークセキュリティ機能の説明
- 一般的なID・ガバナンス・プライバシーポリシーおよびAzureのコンプライアンス機能の説明
- Azureのコスト管理とService Level Agreementsの説明
CCSP(Certified Cloud Security Professional)
情報セキュリティの専門家育成を目的に設立された国際的NPOの（ISC）が認定している資格です。
CCSPは、（ISC） のサイバーセキュリティ専門家によって確立されたセキュリティポリシー、セキュリティ対策の手順と実施訓練に基づき、クラウドサービスを安全に利用するために必要なスキルを体系化しているのが特徴と言えます。資格を取得すると、サイバー攻撃・情報漏洩・クラウドコンピューティングのセキュリティ対策、クラウド系情報システムの開発・運用管理・セキュリティ対策などの高度なスキルを持っている証明になります。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- クラウド系システムの設計コンセプトと設計実施
- クラウドデータセキュリティ対策・運用
- クラウドプラットフォームとインフラのセキュリティ対策・運用
- クラウドアプリケーションのセキュリティ対策・運用
- セキュリティ対策に関する法規とコンプライアンス
CompTIA Cloud+
CompTIA Cloud+は国際的なIT業界団体・CompTIAが認定している資格の１つで、クラウドサービスのセキュリティ専門資格になります。
具体的にはクラウド系システムにおけるセキュアな環境の設計・実装、運用管理、仮想化技術などに関するスキルを認定する資格です。資格を取得すると、AWS、Google Cloudなど特定のクラウドサービスプラットフォームに依拠しないクラウドセキュリティのグローバルなスキルを持っている証明になります。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- 標準的なクラウドテクノロジーの理解
- クラウドテクノロジー(ネットワーク、ストレージ、仮想化技術など)の実装・保守知識
- ITセキュリティを理解し、業界のベストプラクティスを使用してクラウドのセキュリティ対策を実施できるスキル
ネットワークスペシャリスト資格
ネットワークスペシャリスト資格は情報処理推進機構が認定しているIT系国家資格の１つで、ネットワークシステムの専門資格です。
資格を取得すると、ネットワーク技術の専門家としてネットワークに関する固有技術を活用し、最適な情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たせるスキルを持っている証明になります。このためクラウドエンジニアの多くが取得している資格の１つと言われています。
資格認定試験では、主に以下のような技能が問われます。
- ネットワーク技術・ネットワークサービスの動向を広く見通し、目的に応じた適用可能な技術・サービスを選択できる
- 情報セキュリティを含む企業・団体、または業務システムの要求を的確に理解し、ネットワークシステムの要求仕様を作成できる
- 要求仕様に関連するモデリングなどの設計技法、プロトコル技術、信頼性設計、セキュリティ技術、ネットワークサービス、コストなどを評価し、最適な論理設計・物理設計ができる
- ネットワーク関連企業（通信事業者、ベンダ、工事業者など）を活用し、ネットワークシステムの設計・構築・運用・保守ができる
クラウドエンジニア向け資格の選び方
クラウドエンジニア向けの資格・検定には、前述の6資格・技能検定以外にもLinux認定資格LinuCレベル3、VMware認定資格、PMP認定資格など10種類以上の資格・検定があります。このため「何を基準に選べばいいのか？」と戸惑っているクラウドエンジニアも多いと思われます。
そこで資格・検定選びの主な基準として挙げられることが多いのが次の3点です。
- 基礎的な資格や汎用性の高い資格を選ぶ
- システム開発・運用保守の実践的な資格を選ぶ
- システム開発・運用保守経験の有無から選ぶ
これらを基準にクラウドエンジニアとしてのこれからのキャリアパス、自分との相性や性格(学究肌タイプかリーダータイプか参謀タイプか)などを加味すると、自分に適した資格を発見しやすいのではないでしょうか。
まとめ
AWS、Google Cloudなどの三大プラットフォーマ―の技能検定は受験勉強がしやすい環境が整っています。またクラウドエンジニアとしての接点も多いので、最低でもいずれか1つ検定合格を取得しておくと転職や社内キャリアパスに有利に働きやすいでしょう。
またネットワークスペシャリストのようなクラウドに関する高度で共通的なスキルがもとめられる資格や、CCSPやCompTIA Cloud+のような高度なセキュリティスキルが求められる資格などを、プラットフォーマ―の検定合格プラスαで取得しておくと、自分の活躍の場が広がりキャリアアップにも有利になりやすいです。
