クラウドエンジニアは数あるIT職種の中でも高収入職種の1つで、多くの企業がオンプレミスから、導入が簡単で初期費用が比較的安価なクラウドコンピューティングに移行していることから、クラウドエンジニアの需要が年々高まっており、クラウドエンジニアの求人募集も増加傾向にあります。

ここではその実情と理由、クラウドエンジニアの将来性であるキャリアパスを解説します。

クラウドエンジニアの年収

情報システムのオンプレミスからクラウドへの移行進展に伴って深刻化しているクラウドエンジニア不足。ではクラウドエンジニアはどの程度の年収を得ているのでしょうか。

例えば外資系人材紹介会社のヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンが2021年6月に発表した「求人が最も増えたIT関連職種(2019年3月~2020年2月求人件数と、2020年3月~2021年2月求人件数を比較)」によると、以下のようなデータが発表されています。

  1. 1位:クラウドエンジニア
  2. 2位:デスクトップサポート
  3. 3位:データサイエンティスト

近年急速に拡大したリモートワークを背景に求人が急増した「クラウドエンジニア」の場合、年収は前年比71%増です。同社が毎年発表しているIT職種の給与水準「ヘイズアジア給与ガイド」では、最高年収も900万円から1200万円に大幅アップしています。

またカカクコムが運営する「求人ボックス給料ナビ」によると、2021年8月4日現在の年収は、以下のようになっています。

  • クラウドエンジニア……正社員の平均年収597万円
  • インフラエンジニア……正社員の平均年収549万円
  • ITエンジニア平均………正社員の平均年収520万円

いわゆる「クラウド時代」を背景にしたクラウドエンジニアの需要増が、労働市場での求人データが証明した形です。

クラウドエンジニアの収入が高い傾向にある理由

旧来からITエンジニア職種は高収入の1つです。そしてITエンジニアの中でクラウドエンジニアの収入が高い傾向にある理由として次の2つが挙げられます。

クラウドエンジニアは、IT職種の中でも最も広く深い専門知識が要求される職種です。この特性がクラウドエンジニアの収入の高さの背景にあります。

■インフラエンジニアとしてのスキルと経験が必要

クラウドエンジニアになるには、基本的にインフラエンジニア(サーバエンジニアやネットワークエンジニア)としてのスキルと経験が必要。加えてクラウド全般とクラウドサービスの専門知識も必要

■プログラミングスキルも必須

クラウド環境下で情報システムを安定的に稼働させるためには、9レイヤーのシステム整合性を取る必要があり、この処理にプログラミングスキルが必要

クラウドエンジニアの高収入はいつまで続く?

ではクラウドエンジニアの高収入は何時まで続くのでしょうか。これについては、クラウドエンジニア不足に起因した一過性のものではなく、構造的なものと見られています。その理由として、情報システム市場における「クラウドファーストとクラウドネイティブの浸透」が挙げられます。

■クラウドファースト

クラウドファーストとは「情報システムの開発・運用においてクラウド利用を前提にすること」とされています。クラウド前提のシステムなら仮想化したサーバの拡張・縮小、ストレージ追加などが容易な上、ユーザ企業は情報システム構築のために高額なハードウェアを調達する初期投資が不要になります。またユーザ企業は、情報処理量の調査や情報システム開発計画に多大な時間とコストをかける必要もなく、必要最小限のコストでシステム構築が可能です。

■クラウドネイティブ

クラウドネイティブとは「クラウドのメリットを最大化する」との考え方です。このためクラウドネイティブでは、情報システムの基幹部分はもとよりその上で動作するアプリケーションソフトもクラウド化の対象にしています。それを可能にする技術として「コンテナ」、「マイクロサービス」、「宣言型API」などが開発されています。


クラウドエンジニアに求められる適性

苦労してクラウドエンジニアとしてのスキルを習得し、せっかくクラウドエンジニアになっても長続きしない人も。その原因の大半が適性に由来するとの見方もあります。

そこでクラウドエンジニアの適性として次が挙げられます。

先端技術への好奇心が強い

AI、IoT、量子コンピュータ、……。ITの世界では次々と新技術が開発され、実用化されています。実用化された新技術はクラウドの世界で次々と採用されてゆきます。このため新技術が発表されると即座にその情報を集めて研究し、自分のスキルアップにどのように活かせるかを考えるタイプは、クラウドエンジニア向きと言えます。

常に問題意識を持っている

常に問題意識を持ち、「このデータ処理をもっと効率化できないか」、「この業務フローをもっと簡素化できないか」などと考えているタイプは、クラウドエンジニア向きと言えます。

コミュニケーション能力が高い

システム開発はチームワークが基本です。このためコミュニケーション能力はクラウドエンジニアの必須能力と言えます。

根気がある

システム開発における各種ソフトウェアのインストール、バッチ処理、チューニングなどに想定外のトラブル発生は付き物です。システム開発の一端はトラブル処理との戦いと言われます。この地味な作業を根気よく続けられないタイプは、クラウドエンジニアに不向きと言えるでしょう。


クラウドエンジニアのキャリアパス

オンプレミスのITエンジニアからクラウドエンジニアに転換し場合、どんなキャリアパスがあるのでしょうか。これには次の4つが挙げられます。

クラウドスペシャリスト

1つ目は、クラウドスペシャリストです。ネットワークからアプリケーションまでのクラウド構造に精通し、上流工程の設計から下流工程の運用管理・保守まで豊富な現場経験を持ち、若いエンジニアを技術指導できるエンジニアを目指す道です。

得意な道を究めたい学究肌のエンジニアや「生涯一クラウドエンジニア」を目指す人に向いたキャリアパスと言えます。

クラウドアーキテクト

2つ目は、クラウドアーキテクトです。システムの要件定義と基本設計、基幹部分の仕様策定と詳細設計などができるクラウドエンジニアを目指す道です。

そのためには、システムの要件定義と基本設計をするための様々なモデリング技法に通じている必要があります。クラウドスペシャリスト同様、「生涯一クラウドエンジニア」を目指す人に向いたキャリアパスと言えます。

プロジェクトマネージャー

3つ目は、プロジェクトマネージャーです。システム開発に必要な予算、スケジュール、工数、プロジェクトメンバー各自の役割分担などを決定し、プロジェクト全体を管理し、システム開発を納期通りに完了できる管理職エンジニアを目指す道です。

プロジェクトマネージャーの一番重要な仕事は、Quality、Cost、Deliveryの「QCD管理」です。このためプロジェクトマネージャーには、システム開発全体を俯瞰し、問題点の発見と予防、トラブルの即時解決などができるスキルが求められます。コミュニケーション能力が高くデスクワークが苦にならないクラウドエンジニアに向いたキャリアパスと言えます。

クラウドコンサルタント

4つ目は、クラウドコンサルタントです。企業の経営・事業に関する課題を解決するため、最善と思われるクラウド環境下の情報システム活用策を策定し、提案できるコンサルティングエンジニアを目指す道です。

そのためにはクライアントの各部門における業務内容や情報システムの活用ニーズ、それに基づくオンプレミスではできなかった課題のクラウドによる解決案提案、クラウド環境下でのシステム開発計画書作成などのスキルが必要になります。人の役に立ちたい意欲が強い、ストレス耐性があるなどのクラウドエンジニアに向いたキャリアパスと言えます。


まとめ

クラウドエンジニアになると他のIT職種より高収入が得られる、キャリアパスもできるなど他のIT職種にはない魅力があります。しかしクラウドエンジニアを目指している人の中には、適性問題で悩んでいる人もいると言われます。「スキルは習得できても適性は習得できない」と考えているからです。

しかし不向きな適性も現場で意識してOJT的に経験を積めば、向いている適正に変えられると言われます。「習うより慣れよ」との諺もあります。クラウドエンジニアの仕事に興味がある人は、適性は気にせず積極的に挑戦すると良いでしょう。


この記事を書いた人

株式会社アイエスエフネット

エンジニアと共に成長し続けるITインフラ企業です。

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