AWSエンジニアの主な業務はシステムの構築や運用、保守です。他にもプログラミングやWEB開発も担当しています。とはいえAWSが提供している機能は200を超え、今後もさらに多様なサービスが展開されることが予想されます。
そのため、AWSエンジニアは将来性が高く、活躍できるシーンも増えていく職種と言えます。しかし、インフラやサーバーOS、AWSへの理解など身につけるべきスキルや技術が多く挫折しやすいのも事実です。
AWSエンジニアはクラウドエンジニアの一種です。「リモートワークの普及」や「ビジネスモデルの変革」「コスト面」などからITシステムをオンプレミスからクラウドへ移行する企業が増加し、クラウドエンジニアの市場価値が高まるとともに、クラウドエンジニアの求人募集も増加しています。
この記事ではAWSエンジニアの業務内容、必要な知識について解説しています。また、AWSエンジニアに関する不安や疑問についてもふれています。AWSエンジニアの業務内容が知りたい人、未経験からAWSエンジニアを目指す人の参考になるはずです。
▼目次
AWSエンジニアの業務内容
AWSエンジニアの業務内容は、大きく分けて3つです。
- 企画と設計
- 構築
- 保守と運用
企画と設計
AWSを使って開発環境を企画・設計します。開発はローカル環境か、AWS上で行います。ただし本番環境はAWS上に展開されており、ローカル環境での開発環境もAWSに近づけることが重要です。
システムの開発環境と本番環境の差は、開発効率やソフトウェアの品質を左右します。開発環境を本番環境に近づけるのは、その差を埋めてクオリティーの高いソフトウェアを提供するためです。
AWSでの構築はクラウドの特性や長所・短所を把握した上で行わなければなりません。その手助けとして、AmazonはAWSの設計ガイドを公開していますが、自分自身で学習することも大切です。
構築
システムを構築するときは、AWSの機能を組み合わせます。AWSで利用できる機能を以下に5つまとめました。
- サーバー環境の構築
- データ保存
- コンテンツ配信
- データベース
- セキュリティー
これら以外にも多くの機能がリリースされている中、エンジニアはシステムに必要な機能を選定し、スムーズに開発と運用ができる環境を構築します。また、システムを構築した後はテストも行います。
保守と運用
システムが安全に安定して稼働できるようにするのも、エンジニアの仕事です。保守と運用では、セキュリティー対策や監視、サーバーの増設、機能のアップデートなどを行います。
運用と一口に言っても内容は幅広く、エンジニアのスキル次第で担当する業務は異なります。AWSエンジニアとして活躍するシーンを広げるためには、担当業務以外の仕事に関しても知識やスキルを習得しなければなりません。
AWSエンジニアに必要な知識やスキル
AWSエンジニアに求められる知識やスキルは4つです。
- AWSへの理解
- インフラ構築の知識
- OSやミドルウェアへの理解
- データを適切に扱うスキル
AWSへの理解
AWSエンジニアにもっとも必要なのは、AWSサービスへの理解です。提供されている200以上の機能から構築するシステムにふさわしいものを選定しなければなりません。機能の組み合わせによってコストも変動するため、最適な組み合わせを見い出すことも大切です。
ですからAWSの機能やシステム、料金について熟知しておくことが求められます。
⇒「AWS資格とは?取得するメリットや効果的な学習方法についても解説」
インフラ構築の知識
インフラ構築に関する知識とは、サーバーOSの構築、セキュリティーなどです。さらに、ネットワーク全般に関しても基礎部分は押さえておいてください。
AWSエンジニアにはAWSへの理解と合わせて、従来のインフラエンジニアとしての知識も必要です。インフラエンジニアとしての経験があるなら、AWSエンジニアへの転向も考えられます。
OSやミドルウェアへの理解
OSやミドルウェアへの理解は、サーバー構築や運用において欠かせません。ここでいうOSとは、サーバー専用に開発されたOSのことです。サーバーOSは主に3つです。
- Windows系
- UNIX系
- Linux系
Windows系は親和性が高く管理がしやすいとして、近年シェアを伸ばしつつあります。ですが、サーバーOSの元祖ともいうべきUNIX系OSに関する知識は身につけておいて損はしません。
低コストで運用できるLinux系も採用しているところが多く、基本的な知識は押さえておくようおすすめします。そもそもLinux系は個人でも利用できるように無償で提供されているものが多く、自宅のパソコンでサーバーを構築することも可能です。
そして、ミドルウェアはOSとアプリケーション双方の機能を補佐する役割を果たします。
- WEBサーバー
- APサーバー
- データベースサーバー
これらはユーザーやサーバーからのリクエストに応じて必要なデータを提供します。また、システムの運用にかかわる運用ミドルウェアもあります。
サーバーを構築するときは、ミドルウェアの機能や役割を理解していることがポイントです。
データを適切に扱うスキル
AWSへのストレージに保管されているデータを適切に扱うことも、重要なスキルです。
AWSはデータ容量が課金制のため、ストレージ容量の消費に無駄があればコストが膨らむ一方です。さらにいえば、ログデータを保管しているだけでもコストは発生します。
こうしたコストの無駄をカットできるようにAWSエンジニアは不要なログの発生を防ぐ設定をしたり、古いデータは削除または上書きしたりといった対応が求められます。
AWSエンジニアの将来性
AWSエンジニアは将来性が高い仕事です。そういえる理由は3つあります。
- クラウドサービスを利用する企業が増えている
- AWSのサービスが多様化している
- AWSエンジニアが不足している
クラウドサービスを利用する企業が増えている
総務省の「令和4年版 情報通信白書」によると、クラウドサービスを導入する企業は急速に増加しています。主にファイル管理、データ共有や電子メールなどをクラウドサービスに頼っており、ある程度効果があったとする企業が半数を超えました。
このような事情から、クラウドサービスを扱えるエンジニアの需要は今後も高まっていくと予想できます。
AWSのサービスが多様化している
現在、AWSが提供している機能は200以上です。また、世界中のユーザーから寄せられるリクエストに応じて機能を実装、アップデートしており、2021年の総リリース数は3084回でした。このことから、Amazonがクラウド事業にかなり力を注いでいるとわかります。
こうした事情から今後はさらに多くの業界やシーンでクラウドが利用されることは容易に想像できます。ですから、AWSに精通したエンジニアが求められるのは自明です。
AWSエンジニアが不足している
AWSエンジニアとして活躍している人は少ないのが現状です。多彩な機能を備えたAWSから必要な機能を選び、コストを抑えながらシステムを構築できるAWSエンジニアは企業にとって必要な存在です。
また、これまでオンプレミスでの開発や運用が多かったエンジニアも、今後はクラウドサービスでの構築、開発が求められます。長い目で見れば、キャリアの幅を広げるためにもAWSを扱えるようになっておくべきです。
もちろん、未経験者でも今から勉強を始めれば十分に間に合います。
AWSエンジニアに関する不安や疑問
AWSエンジニアに魅力や希望を感じている方の中には、次のような不安や疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- AWSエンジニアへの負担の大きさ
- 文系はAWSエンジニアに不向き
- 未経験者はAWSエンジニアになれない
AWSエンジニアへの負担の大きさ
AWSエンジニアへの負担は、従来のオンプレミス環境ほどではありません。シンプルな操作と安定したシステム、またセキュリティーに関しても高い安全性を実現しているのが理由です。
文系はAWSエンジニアに不向き
AWSエンジニアとして働くのに、文系や理系は関係ありません。ただし、文系の場合はシステムやインフラ構築に関して詳しくないことが多いため、貪欲に知識を吸収する姿勢がポイントです。
未経験者がすぐAWSエンジニアになるのは難しい
IT業界の未経験者でもAWSエンジニアを目指すことはできます。ただし思い立ってすぐに現場に出て働くのは無理があり、事前に知識やスキル・技術を身につけておくことが重要です。未経験者がAWSエンジニアになる方法については後述します。
未経験からAWSエンジニアになる方法
未経験者がAWSエンジニアになりたいと希望するなら、4つの方法があります。
- スクールに通う
- 実務経験を積む
- 資格を取得する
- AWSでシステムを構築する
スクールに通う
未経験からAWSエンジニアを目指すなら、専門のスクールで学ぶのが近道です。スクールによって学習内容や料金は異なりますが、AWSの基礎を学べます。また、就職や転職サポートをおこなっているところであれば、より安心です。
オンラインで動画を使って学習するスタイルなら、場所や時間を問わず自分のペースで学べます。
実務経験を積む
IT関連企業でインフラエンジニアやプログラマーとして働き、実務経験を積むとよいでしょう。さまざまな案件や業務を通して、AWSエンジニアにつながる知識や技術が自然と身についていきます。
例えばインフラエンジニアなら、オンプレミスとクラウドという環境の差はあっても業務内容に差はありません。そのため、無理のないキャリアパスを描けます。
プログラマーとして働くときも同様に、AWS関連のスキルを身につけておきましょう。AWSエンジニアの案件には、WEB開発やプログラミングが求められるものもあります。ですから、プログラミングができるエンジニアは案件獲得に有利です。
資格を取得する
AmazonはAWSの認定資格を設けています。
- 基礎コース
- アソシエイト
- プロフェッショナル
基礎コースから始めて順番に資格を取得できれば、AWSエンジニアに必要なスキルを身につけられます。より高単価の案件を獲得したいなら、プロフェッショナルの取得を目指してください。
また、これ以外にも取得しておくと企業へのアピールになる資格があります。
- LPIC
- LinuC
- CCNA
- 基本情報技術者試験
資格取得を目指す過程でインフラ構築やサーバーOSへの理解が深まり、知識が身につきます。
AWSでシステムを構築する
AWSエンジニアとして働くなら、AWSについての知識と技術が身についていることが前提です。既存のWEBサービスを真似て、実際に自分でシステムを構築するのはAWSへの理解を深めるうえで重要なポイントです。
AWSは個人でも契約でき、操作に慣れるという意味でも必要なプロセスといえます。ただし、無料で利用できる期間や機能には制限があり、それを超えると料金を請求されます。ですから、利用する期間やシステムの稼働時間などには十分注意してください。
AWSエンジニアが活躍する業界
以下に、AWSエンジニアが活躍する業界を3つ挙げました。
- WEBサービス関連
- ゲーム開発関連
- 製造業やメーカー
WEBサービス関連
WEBサービス関連は、AWSエンジニアにとって特に業務内容が幅広い業界です。
データベースの構築や広告マーケティングの効率化を図るシステムを設計、開発します。また、ビジネスマーケティングにおいてはデータアナリストに近い業務を担当することもあります。
ゲーム開発関連
ゲーム開発もAWSエンジニアの仕事です。主な仕事は、リリース予定のゲームの仕様や運用方針などを決め、最適な環境を整備することです。他にもデータ管理やメンテナンス、アプリのバージョンアップに伴って仕様が変わったときの対応や再構築も担当します。
製造業やメーカー
製造業やメーカーは、製造マシンやデータ管理、運用などにAWSを利用しています。AWSエンジニアの仕事は製造工程をスムーズに進めるためのマシンやシステムの開発です。また、ユーザーからの反応や収益といったデータの活用も行います。
まとめ
AWSエンジニアはシステムの設計、構築、運用や保守が主な仕事です。エンジニアのスキルによっては、WEB開発やプログラミングもおこないます。
現在、多くの企業がクラウド技術を取り入れていますが、反面、クラウド技術に精通したエンジニアは不足しているのが実情です。そのため、AWSエンジニアの将来性は高く、今後もその需要は高まっていくと予想されます。
未経験者がAWSエンジニアを目指すなら、スクールに通うか資格取得からはじめてみるとよいでしょう。IT関連企業へ就職して実務経験を積んだり、実際にAWSでシステムを構築したりするのもよい方法です。
AWSエンジニアとして活躍できるシーンは幅広く、また専門的な知識が求められる仕事でもあります。AWSエンジニアとしてどのように働きたいか、自分なりのキャリアパスを考えてみましょう。