求人には、一般雇用枠のほかに、障がいをお持ちの方を対象とした「障がい者雇用枠」があります。

そもそも障がい者雇用は、どのような方が対象になるのでしょうか? 障がい者雇用枠で働く場合のメリット・デメリットはどんなことでしょうか。

今回は、障がい者雇用枠の概要と、枠を利用して働くメリットとデメリットについて紹介します。

障がい者雇用枠とは?

障がい者雇用枠とは、「障害者雇用促進法」により設けられた雇用枠のことです。障がいのある方が雇用される機会を促進し、社会で活躍できる環境をつくることを目指しています。

日本における障がい者雇用の現状は、民間企業の雇用状況が実雇用率2.25%、法定雇用率達成企業割合が48.3%となっています。障がい者の雇用者数は19年連続で過去最高の数字を更新しており、日本全体で着実に進展している状況であると言ってよいでしょう。

引用:最近の障がい者雇用対策について|厚生労働省

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障がい者雇用枠の対象になる「種類」とは?

障がい者雇用枠の対象になる症状には、いくつかの種類があります。それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

対象1:精神障がい

精神疾患が要因となり、脳や神経機能へ影響を及ぼす状態を「精神障害」といいます。

日常生活や社会活動において支障をきたしている状態を指し、その原因は主に「外因性」・「心因性」・「内因性」に区分される形です。

  • 外因性:外部の影響(外傷・薬物接種等)により、脳神経の伝達に支障がでている状態。症状の要因の一つに、脳挫傷や感染症などが挙げられます。
  • 心因性:元々の性格や特性、環境の影響による心理ストレス。急性ストレス障害や適応障害などが該当します。
  • 内因性:外因性や心因性に分類されず、明確な要因がないものが挙げられます。気分障害や統合失調症などが代表例として挙げられます。

<具体例>気分障害(うつ病、躁うつ病)、統合失調症、双極性障害、アルコールや薬物依存症、てんかん、パニック障害、高次脳機能障害 等

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対象2:知的障がい

出生児もしくは乳幼児初期から知能が標準以下であると認められる状態を「知的障害」といいます。

以下の3つの領域から正常な生活を行うことが困難な状態があるか否かを総合的に判断し定義される形です。

  • 概念的領域(読み書き、知識、論理的思考、問題解決等など)
  • 社会的領域(対人コミュニケーション、社会的判断、自己制御など)
  • 実用的領域(金銭管理、行動管理など)

対象3:発達障がい

先天的な要因で脳機能の発達に障害を及ぼす状態を「発達障害」といいます。

得意分野や不得意分野の差が極端に生じたり、物事へのこだわりの強さ、他人の感情を汲み取ることが不得意だったりと社会生活において困難を抱える方が多く見受けられる傾向です。

  • 広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群)
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)
  • 学習障害(LD)

おおまかに上記に区分されるほか、感覚過敏や感覚鈍麻の症状が見受けられる場合もあります。

<具体例>自閉症、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群、吃音症 等

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対象4:身体障がい

一部の身体機能に障害が生じる状態を「身体障害」といいます。

  • 肢体不自由
  • 視覚障害
  • 聴覚・平衡機能障害
  • 音声・言語機能、咀嚼機能の障害
  • 内部障害

<具体例>四肢や体感の障害により日常動作が困難、視力や視野が全く見えない、見えにくい、音や話し声が聞こえにくい、平衡機能がうまく働かずに歩行や起立が不自由、音声による意思疎通が難しい、食べ物を咀嚼して飲み込みづらい、特定の臓器の機能障害、免疫機能障害など。


障がい者雇用枠で働くメリット

障がい者雇用枠で働くメリットについて詳しくみていきましょう。

企業からの理解・配慮を得ながら働ける

企業からの理解や配慮を得やすいのは、障がい者雇用枠で働くメリットです。

障がい者雇用枠であれば、入社前に障がいについて相互間での認識を合わせられます。事前に不安を解消しておくことも可能であり、かつ、業務にあたって得意なこと、働く環境についても相談しておくことが可能です。そのため、入社後のミスマッチが少なく安心して働くことができるでしょう。

また障がいを抱えている方の中には、体調が起因して健常者と同様の働きが困難になることが時折あります。障がい者雇用であれば、当日の体調不良や不得意とする業務への理解や配慮を得られ、無理のない範囲で働きやすいです。

体調不良時など柔軟に対応してもらえる

障がい者雇用枠であれば、体調不良時に柔軟に対応してもらいやすいです。

障がいによっては日によって症状が変化したり、定期的に通院が必要な場合があります。障がい者雇用枠であれば、事前のすり合わせができているため、突然のお休みにも柔軟な対応が期待できます。休みを取ることへの不安やストレスが一般的な求人で入社するときと比較しても少ないため、無理のない働き方が可能になります。

実際に、企業が行っている障がい者雇用枠に該当する人のための、合理的な配慮事例は以下のとおりです。

【視覚障がい者に対する合理的な配慮の事例】

  • 面接にハローワークの職員、障がい者就業・生活支援センターの職員、特別支援学校の教諭、家族、介助者等の同席を認める
  • 盲導犬への対応
  • 担当者を定め、障がい者が働く上で支障となっている事情を互いに認識し、その支障となっている事情の解決のためにはどのような配慮が適切かといったなどの相談
  • 業務指導や相談対応、定期的なアンケートの実施

【聴覚・言語障がいに対する合理的な配慮の事例】

  • 面接において紙の他、筆談パッドやホワイトボードによる筆談等の手段を用意
  • 業務指示・連絡に際して、筆談やメール等を利用
  • 混雑時の危険を避けて出勤時間をずらしたり、休暇・休憩の連絡をメールで行ったり等の配慮
  • 危険が発生した場合の合図・連絡は、視覚で確認できるようにしておき、危険な箇所はあらかじめ目で見て分かるように工夫しておくこと等の配慮

参考:合理的配慮指針事例集|厚生労働省

継続して働きやすい

障がいをお持ちの場合、一般雇用よりも障がい者雇用枠で働き始めた方が、長期間定着して働きやすい傾向があります。厚生労働省が行った調査によると、障がい者雇用枠を利用した人よりも、一般求人に自身の障がいを非開示で就職した人や、一般求人に障がい開示で就職した人の方が職場定着率は低くなる傾向があります。(以下図版:【障がい者の定着状況について】)

引用:障害者雇用の促進について関係資料|厚生労働省

障がい者雇用の1年後の定着率は67.2%であるのに対して、一般雇用で障がいを開示した場合の定着率は49.9%、障がいを開示しない場合の定着率は30.8%となっています。

引用:障がい者雇用の促進について関係資料|厚生労働省

またいずれの障がい種別でも、障がい者求人・一般求人障がい開示・一般求人障がい非開示の順で、定着率が低下していることも分かっています。どの場合でも就業開始してからすぐは離職する傾向にありますが、3〜6ヶ月経過してからは、比較的定着状況も安定する傾向にあります。

関連ページ:障がい者雇用と一般雇用の違いは?それぞれの特徴を比較解説


障がい者雇用枠で就労するデメリット

障がい者雇用枠で働くデメリットを詳しくみていきましょう。

一般的な求人と比較すると数が少ない

障がい者雇用枠は、求人数や募集人数が少ない傾向にあります。そのため、障がい者雇用枠での就労を希望していても、希望条件・業種の求人はすぐに見つからないといったこともあるでしょう。就職活動が長期戦になる可能性、自分の希望する勤務地で働くことができないといった可能性もおおいにあります。

職種が少ない傾向にある

一般雇用と比較すると、障がい者雇用は軽作業や事務職などに関連した職種が多く、専門職などは少ない傾向にあります。これは、事務職や軽作業を希望している求職者の人が多く、企業側も合理的配慮に基づいた労働環境を整えやすいことが影響していると言えるでしょう。

軽作業や事務職を希望している人にとっては問題ありませんが、様々な選択肢の中から仕事を選びたい、専門職などに就いて経験やスキルを身につけたいと考えている人にとっては、物足りない可能性があります。

障害者手帳が必須な場合がある

障がい者雇用枠の求人への応募条件には、障害者手帳の保有があります。手帳を保有していない場合には、一部サービスや支援を受けることができても、一般的な求人枠で働くことになってしまうため注意が必要です。ただし手帳を保有しているからといって、必ず障がい者雇用枠に応募しなければならないという制限はないため、障がいを持っていても求人の条件を満たしていれば、一般的な求人の枠へ応募することも可能となります。

自分が無理をすることなく長期的に安定して勤務できる雇用形態を考えて判断すると良いでしょう。


まとめ

今回は、障がい者雇用枠で働く際の特徴とメリット・デメリットを紹介しました。

障がい者雇用枠で修飾するメリットは、障がいに対して事前に理解を受けた状態での入社が可能です。入社後には、企業側からの配慮を受けることができるため、安心して働きやすい傾向にあります。デメリットとしては、求人数や職種の選択肢がそもそも少ないことや、障がい者手帳が必須な場合があることです。

しかし、障がい者手帳を保有していても、一般求人へ応募することに制限はないため、自身の体調や障がいの程度、希望している仕事など、さまざま点から総合的に判断して状況に合わせた活用を検討しましょう。

この記事を書いた人

株式会社アイエスエフネット

エンジニアと共に成長し続けるITインフラ企業です。

ITインフラエンジニアの育成に力を入れ、クラウドなど時代のニーズにあわせたソリューションを展開しています。また、年齢や性別、国籍、障がいの有無に関係なく、あらゆる方々がやりがいをもって働くことができるダイバーイン雇用に取り組んでいます。

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