精神障がいが要因で休職・離職をした場合、再就職や社会復帰のハードルが高いと感じる方も少なくありません。
ですが事前に就労に関わる現状を知り、最低限のコツを押さえれば、就職活動の成功率を上げることは十分可能です。場合によっては障がい者雇用枠の利用も選択肢に入れることができます。
今回は、精神障がいを持つ方が就職活動をするポイントと、入社後に意識したいポイントを紹介します。
精神障がいがあると就職・復職は難しいのか?
精神障がいは、ひと昔前に比べれば徐々に理解が広まりつつあります。ですが認知度や理解度がまだ十分とはいえず、一般的に受け入れてもらうことへの難しさを感じる場合もあるでしょう。
しかし近年では、障がい者の雇用に関して法が策定され推進する動きがあったことで、精神障がい者の雇用率も高まり、就職しやすくなってきています。
精神障がいも「障がい者雇用義務化」の対象に
企業は、障害者雇用促進法に則り、規模に応じて一定数の障がい者を雇用することが義務付けられています。法定雇用率を満たさない企業は、障がい者雇用計画の未達成分に相当する納付金が求められているのです。実施勧告に正当な理由なく応じない企業に対しては、企業名を公表するなどの様々なペナルティが発生します。
2018年には法改正があり、精神障がい者も対象になりました。そのため、一般企業での雇用の割合も増加傾向にあります。
障がい者雇用は、契約社員やパート・アルバイトの雇用形態をとっているケースが多いため、いきなり正社員採用の場合に比べてプレッシャーを抱えることなく就労しやすいでしょう。
そのためこの制度を利用することで、無理なく就職・復職できる場合があります。ただし企業によって採用条件が異なるため、注意が必要です。
関連ページ:障がい者雇用とは?障がいのあるITエンジニアが知っておきたい基礎知識
公的な支援を利用しながらの就活も可能
また、就労移行支援事業所や障がい者雇用専門のエージェントを利用することもおすすめです。就職・復職に伴う専門的なアドバイスやサポートを受けることができ、希望する方には、就労に必要なスキルの習得も可能となる場合もあります。
1人で就活をする上で不安がある方は、これらの支援を活用することで、就職へのハードルも下がるでしょう。
精神障がいのある方が就職活動するポイント
就職活動を成功させるには、ポイントを押さえることが大切です。詳しく見ていきましょう。
ポイント1:自身で症状を明確に把握できているか
一言に精神障がいといっても分類される種類は、総合失調症やうつ病など様々あります。また、人によっても程度や症状は異なります。企業側としては、入社後に任せる業務内容や範囲、症状に対しての必要な配慮などについて理解しておく必要性があります。
よって就職・復職する前に、第三者に説明が明確にできるように、ご自身も症状について理解と把握をしておくことが大切です。就活の段階で自己分析をする際に、症状を明確にわかりやすく説明できるか考えながら整理すると良いでしょう。
ポイント2:障害者手帳が手元にあるかを確認
事前に準備をしておきたいものの一つに「障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)」が挙げられます。障がい者雇用で入社するためには、「障がい者雇用枠」を利用します。手帳の保持は障がい者雇用枠での就職の条件になるため、まだ保有していない方は、居住している市区町村での申請を検討しましょう。
関連ページ:精神障害者保健福祉手帳とは?障がい者雇用で知っておきたい基本を解説
ポイント3:障がい者枠で就職するのか?一般枠で就職するのか?
障がい手帳を保有していても、一般雇用枠での採用を選択することも可能です。就活時に「障がい者雇用枠」にするのか「一般雇用枠」にするのか選択しておきましょう。
- 障がい者雇用枠
障がい者を対象にした求人のことをいい、オープン就労とも呼ばれます。就活中に企業側へ精神障がいについても明示が必要です。
- 一般雇用枠
障がい者に限定しない求人のことをいい、クローズ就労とも呼ばれます。どちらの雇用枠で就活をするかによって、採用までの過程や入社後の働き方が異なります。
下記にそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。
障がい者雇用枠(オープン就労) | 障がい者雇用枠(オープン就労) | |
---|---|---|
メリット | ・症状に応じた業務内容や就労においての サポートを得やすい ・通院や体調不良など急な休みにも配慮してもらえる ・働き方について三者間(本人・企業・支援団体) での話し合いの場を設けることができるケースもある | ・職種や業種の選択肢の幅が広がる ・給与水準は、障がい者雇用枠と 比較すると高水準 |
デメリット | ・求人数や職種や業種の選択肢が少ない ・給与が低水準のケースが多い | ・障がいに対しての理解や サポートが受けられない ・障がいを周知できない不安感 ・通院の 調整や体調管理が必要 |
障がい者雇用枠は、企業側が障がいへの理解があるため、症状に対してのサポートや支援を受けやすく、無理なく安心して働けます。
一般雇用枠は、求人数に制限はなく給与面も期待できる反面、自身で症状をしっかりと管理する必要性があります。
働きやすい雇用形態はどちらなのかを見極めて選択しましょう。
関連ページ:障がい者雇用と一般雇用の違いは?それぞれの特徴を比較解説
ポイント4:正社員雇用での就職をめざすか?
安定して長期的に働くため正社員雇用での就業をめざす人も多いのではないでしょうか?
ただし、いきなり就職・復職する際に正社員の雇用で問題ないかと不安になる人も多いです。職場環境に慣れていない時期は、ストレスや不安を抱えやすく長く働くことが難しくなってしまっては、せっかく入社しても残念な結果になる可能性も考えられます。
まずは正社員にこだわることなく契約社員やアルバイト・時短勤務・パートなどで様子を見てみるのも良いでしょう。就活する際はご自身の症状の程度によって雇用形態を検討することをおすすめします。
精神障がいのある方が入社後に意識したいポイント
最後に入社後に安心して就労するために、意識したいポイントを紹介します。
ポイント1:職場環境に馴染むまで無理は禁物
入社後は早く会社に慣れるために、焦りから無理をしてしまいがちですが、環境に慣れるまではゆっくりと職場環境に馴染むことを心がけましょう。
スタート時は「多めに休憩を取得できるか」などの交渉を入社前に相談しておくこともおすすめです。
ポイント2:周囲からの理解を得てサポートに頼る
精神障がいを抱えている方に一番大事にして頂きたいのは、無理をしすぎないということです。初めて働く職場では勇気のいる行動かもしれませんが、上司や先輩・同僚などに頼ることを心がけてみましょう。
サポートしてもらうためには、周囲から自身の症状への理解を得ることが大切です。自身が働きやすい環境になるように、コミュニケーションを密にとるようにしておくと良いでしょう。業務において得意なこと・不得意なことを事前に明示しておくこともおすすめです。
ポイント3:カウンセリングを利用する
障がい者雇用枠での採用ではなく、一般雇用枠で採用された場合には、症状を明示せずに就労する方もいるでしょう。その場合には、職場内でのサポートを得ることが難しいケースもあるかと思います。
万が一、無理がたたり症状が悪化してしまったということにならないためにも、社外に相談できるよう、相談先を探しておくと安心です。
ポイント4:時短勤務が可能か事前に確認しておく
入社後に症状が悪化するなどして勤務に難しさを覚えたときは、雇用条件を見直す必要があるかもしれません。時短勤務に切り替えるなど、症状の緩和に配慮してもらえるかどうか事前に確認しておくこともおすすめです。いざというときも一人で不安を抱え込まずに済みます。
まとめ
今回は、精神障がいを抱えている方が安心して就職ができるように、働き方の選択肢や就活時と入社後のポイントを紹介してきました。
働き方を選択することで、精神障がいと向き合いながら無理なく働くことができます。就職する際にどのような雇用枠で働くかを決めておけば、入社後の職場の環境に馴染んでいない時期や業務が多忙になった際でも、安心して働き続けることができます。
事前にどのように働きたいのか、症状が悪化したときにどう対処するかと決めておくと良いでしょう。