企業で経験を積んだ後、「ネットワークエンジニアとして独立したい」との声を耳にします。ですが、実際にどのような案件を得られるのか心配になる方も少なくありません。
ネットワークエンジニアを含むITインフラエンジニアの需要は、ITシステムを導入する企業の増加により年々高まり、インフラエンジニアの求人募集も増加傾向にあります。
そこで今回は、フリーランスとしてネットワークエンジニアが活動するために必要となるスキル、業務で役立つ資格、案件の探し方、活動の注意点などを解説します。
▼目次

フリーランスのネットワークエンジニアの将来性は?
IT技術が日々進化し、ネットワークの形も変化しているため、ネットワークエンジニアとして求められる仕事も変わりつつあるといえます。ただ、日本はIT人材不足に大きな課題があるので、常に一定の需要が期待できるといえます。
ただし、ネットワークエンジニアに求められるレベルは数年で確実に上がっており、多くの企業ではネットワーク以外の業務を行う必要があります。フリーランスで活躍したいなら、ネットワーク関連はもちろんのこと、他にもエンジニアとして求められるスキルや経験を身につけた方が安定しやすくなります。
フリーランスのネットワークエンジニアが請け負える案件の種類
フリーランスのネットワークエンジニアが請け負える案件には、次のような種類があります。
- ネットワーク構築業務
- ネットワーク設計業務
- ネットワーク運用・保守・監視業務
どれかの業務に特化して、案件を受けるのも問題ありません。ただ、より多くの案件を受けたいなら、幅広い業務をこなせるように備えることが大切です。それぞれの種類を確認していきましょう。
ネットワーク設計業務
クライアントの要望を満たす、ネットワークシステムの設計をする業務です。クライアントの要望を聞き、実際に設計できるのか回答します。また、システム設計の知識はもちろん、運用費用の計算やネットワーク機器の選定、構築スケジュールを作成するなど幅広く業務をこなす必要があります。
ネットワーク構築業務
ネットワーク設計をもとに実際に環境を構築する業務です。ネットワーク機器の設置から設定まで、正確かつ迅速に済ませられる配線方法を考えます。ネットワーク構築業務は、システム規模によって数ヶ月を超える時間を要することがあります。ネットワークを構築したら、設計した通りに正しく動作するかどうか確認します。その後は、現場で微調整を繰り返しながら、安定して動作するネットワーク構築を目指します。これらのことから、ネットワーク構築業務は、専門性の高い知識が必要です。
ネットワーク運用・保守・監視業務
ネットワーク障害が発生した際、顧客と連携しながら迅速に復旧させる業務です。また、ミドルウェアの管理やOS更新など定期的なシステムメンテナンスも運用業務に含まれます。ネットワーク全体を管理する知識が必要な業務です。
フリーランスネットワークエンジニアに必要なスキル
フリーランスのネットワークエンジニアに必要となるスキルは、主に次のとおりです。
- ネットワークについての技術や知識
- 高いコミュニケーション力
- 結論を論理的に導く力
- 自己管理能力・健康管理能力
- 金銭的なマネジメント力
フリーランスとして働く場合、自分で案件を獲得しなければいけません。そのため「一般的な企業に勤務するネットワークエンジニアに求められるスキル」だけでは、続けていくことが難しいです。
ネットワークについての技術や知識
ネットワークエンジニアとして働くには、当然ながらネットワークについての技術や知識が必要です。特にフリーランスで働き始めた頃は、期待した案件を受注できないこともあります。通信技術やネットワーク関連の機器など、ネットワークに関する高い技術や知識を備えておくことで案件を受注しやすくなります。加えて現場では、幅広い業務遂行が求められることも多くあります。一般的なエンジニアが必要とされる技術や知識を押さえておくことで、受注できる案件の幅が広がります。
高いコミュニケーション力
フリーランスネットワークエンジニアとして働き始める場合、顧客の要望を的確に捉えるには高いコミュニケーション能力が必要になります。さらに実際に依頼を受ける場合は、継続的に顧客やほかのエンジニアとやり取りしなければいけません。コミュニケーションに必要な協調性や会話力などがあると、うまく連携を取りつつ業務を進めやすくなります。
結論を論理的に導く力
フリーランスネットワークエンジニアとして活躍したいなら、物事の筋道を立てて論理的に結論を出せる能力が役立ちます。正確なネットワーク構築や迅速な不具合の原因究明などを行う場合は、さまざまな場面で論理的な思考が求められます。論理的思考を身につけるには、日頃から考える癖をつけたり本質的な問いを押さえたりするのがおすすめです。
自己管理能力や健康管理能力
フリーランスは仕事のスケジュールを、自分で管理しなければいけません。自分で案件を管理できる自己管理能力が大切です。また体調を崩すと仕事ができなくなるので、休んだ期間は収入が大幅に減少します。フリーランスネットワークエンジニアになるには、健康管理能力も重要です。会社員の頃から、自己管理能力や健康管理能力を意識して過ごすことでスキルは身につけられます。
金銭的なマネジメント力
会社員として働いているとき、仕事で使用した経費はすべて会社が管理してくれます。ただフリーランスネットワークエンジニアとして働く場合は、経費を自分で管理する必要があります。きちんと経費を管理できないと確定申告で正確な書類を作成できず、損をすることもあります。独立するなら金銭的なマネジメント力を身につけることが大切です。
フリーランスネットワークエンジニアに役立つ資格
フリーランスネットワークエンジニアに役立つ資格は、次のとおりです。
- 基本情報技術者試験
- ITパスポート試験
- シスコ技術者認定試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- Linux技術者認定資格
ネットワークエンジニアがフリーランスになるには、特別な資格は必要ありません。ただし、資格所持により「ネットワークに関する一定の知識があること」を証明できるため、案件を獲得しやすくなることも多いです。
基本情報技術者試験
フリーランスネットワークエンジニアとしてキャリアを始めるには、まず基本情報技術者試験を受験するのがおすすめです。基本情報技術者試験は、経済産業省が実施する国家資格の一つです。ITエンジニアとしての基礎知識を身につけられるので、仕事での応用力の幅を格段に広げられます。
ITパスポート試験
ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験の一つです。デジタルの高度化が進む昨今、ITの知識を備えた人材を求めています。ITパスポート試験を取得すれば、営業活動時に役立つはずです。2009年に開始されて以降、学生や社会人など幅広い層から支持されています。ただし、エンジニアとしては初級レベルの資格であるため、+αの専門的な資格も併せて取得しておくと良いでしょう。
シスコ技術者認定試験
シスコシステムズ社が認定するネットワークのスキルを証明する資格です。シスコ技術者認定試験にはさまざまな種類があり、認定レベルによって合格の難易度は大きく変わります。シスコ製品は世界各国で圧倒的な支持とシェア率を誇るので、外資系会社から案件を獲得したい場合にも役に立つはずです。
ネットワークスペシャリスト試験
目的に応じたネットワークシステムの構築や運用の安定性を維持するための知識や実装能力を認定する国家資格の一つです。ほかの資格と比べて難易度が高い資格であるため、合格できればネットワークエンジニアとして高い知識を証明できます。
Linux技術者認定資格
Linux技術者としてのスキルを認定する試験です。特定非営利活動法人エルピーアイジャパンが認定する日本独自試験で、難易度が分かれています。Linux技術者認定資格は世界180カ国以上で展開されており、受験者は60万人以上に上ります。
フリーランスネットワークエンジニア案件の探し方
フリーランスとして独立する場合、どのように案件を探せばいいかわからない人もいるはずです。ただ独立したばかりでも探し方次第では、すぐに案件を獲得できることもあります。フリーランスネットワークエンジニア案件の探し方は、次の通りです。
- 自分で営業活動を行う
- 前職の人脈を活用する
- エージェントや案件サイトを利用する
自分で営業活動を行う
自分で営業活動を行い、ネットワークエンジニア案件を探す方法があります。特に日本はIT人材が不足している傾向にあるため、気軽に案件を依頼してもらえることも多いです。ただし、ネットワークに関する知識が不足していると企業に信用してもらえません。客観的に判断できる資格を取得したり、技術や経験をわかりやすくアピールしたりして、自身の能力を営業先に売り込み案件取得を目指しましょう。
前職の人脈を活用する
どのように営業活動を行えばいいかわからない人も少なくありません。会社員として働いた経験があるなら、前職の人脈を活用しましょう。能力を評価してくれていた会社であれば、フリーランスになってからも仕事を依頼してくれる場合もあります。効率的に案件を受注できるので、会社員時代からさまざまな人と信頼関係を築いておくことが大切です。
エージェントや案件サイトを利用する
フリーランスネットワークエンジニアとして独立する場合、エージェントや案件サイトを利用して仕事を獲得することも珍しくありません。登録しておけば、自分の知識や能力にマッチした案件を紹介してもらえることもあります。自分から積極的に営業活動しなくても仕事を獲得できます。特に営業活動が苦手な場合は、エージェントや案件サイトを利用するのがおすすめです。
ネットワークエンジニアがフリーランスとして活動する際の注意点
ネットワークエンジニアがフリーランスとして活動する際の注意点として、次があります。
- 会社員でビジネススキルや経験を培う
- 副業で実際に仕事をしてみる
- 在宅勤務できる案件が少ない
- スキルアップは常に怠らない
会社員でビジネススキルや経験を培う
いきなりフリーランスとして活動するのではなく、まずは会社員で経験を積むのがおすすめです。会社で働くことで、社会一般的なビジネススキルを身につけられます。フリーランスで働くと顧客への連絡や報告書の作成、トラブル対応など、すべて自分で行わなければいけません。顧客に迷惑や信頼に欠ける対応をしてしまうと、仕事の依頼を打ち切られる場合もあるので、注意が必要です。
副業で実際に仕事をしてみる
社会一般的な教養を身につけられたら、会社員をしながら副業で仕事を受けてみましょう。実際にフリーランスとして働くイメージが掴みやすいので、その後の独立もスムーズです。また人脈も広がりやすいので、独立後に仕事も獲得しやすくなります。会社員と副業の両立で少し忙しくなりますが、副業の経験が独立した後の仕事に活かせるはずです。
在宅勤務できる案件が少ない
ネットワークエンジニアは、在宅勤務で対応できる案件が非常に少ないです。企業での常駐案件が多くなるので、その点は理解しておく必要があります。また、ネットワークエンジニアの案件は都心に集中していることが多いです。フリーランスを目指すのであれば、拠点を東京や大阪など主要な都市圏に移すことも検討してみましょう。
スキルアップは常に怠らない
フリーランスのネットワークエンジニアとして働くのであれば、スキルアップを怠ってはいけません。IT業界の技術は常に進化しています。将来的にキャリアアップを目指すなら、マネジメント力を高めておくのもおすすめです。マネジメント力があれば、チームの中心核として案件に参加できます。マネージャーやリーダーなどのポジションであれば、継続的な案件の受注も見込めます。
まとめ
ネットワークエンジニアがフリーランスになるのに、特別な資格は必要ありません。ただし、ネットワークエンジニアの案件は専門的かつ幅広い知識が必要になります。また独立した当初は、すぐに案件が獲得できないことも多いです。
いきなりフリーランスに転身するのではなく、会社員として働いてビジネススキルを身につけたり人脈を広げたりするのがおすすめです。安定して案件を受注できるように営業活動に役立つ資格を取得しましょう。