近年、クラウドサービスが急速に普及していくなかで、クラウドエンジニアの需要が高まっています。
そこで、クラウドエンジニアの仕事をしたいと考えて勉強しているが、クラウドエンジニアのキャリアパスにはどんなものがあるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、クラウドエンジニアについて、スペシャリストとジェネラリストそれぞれのキャリアパスについて解説します。
また、クラウドエンジニアのキャリアパスに活かせる資格やスキルについても紹介していきます。
▼目次
クラウドエンジニアのキャリアパス
クラウドエンジニアについて、スペシャリストとジェネラリストそれぞれのキャリアパスを紹介します。
スペシャリスト
クラウドエンジニアのスペシャリストとは、その名の通り、クラウドに関して高度なスキルや豊富な知識を持つ専門家です。設計構築から運用保守まで、クラウドエンジニアとして様々な業務の経験を積み、専門性をより高めていく職種です。現場の最前線で活躍していきたい人、エンジニアとしてより技術力を高めていきたい人にオススメのキャリアであり、「クラウドアーキテクト」や「クラウドコンサルタント」などがあります。
クラウドコンサルタントは、クラウドの知識やスキルを用いて、クライアントの悩みを聞き、解決策の提案などを行います。コミュニケーション力だけでなく、顧客に対する提案力や経営に関する知識も必要なため、クラウド以外の知識を得る努力も必要です。今まで学んできた知識やスキルを活かして、顧客に最適な提案ができた時は、やりがいや達成感を感じることができるでしょう。また、ゆくゆくはクラウドのみに留まらない「ITスペシャリスト」といったキャリアパスがあります。
近年、IT技術が急速に進んできているため、常に最新の技術を学び続けることが必要にはなりますが、技術志向の人にとっては、やりがいを感じられるでしょう。
ジェネラリスト
ジェネラリストとは、特定の分野に関する高度な知識や技術力を持つスペシャリストとは違い、さまざまな分野の知識や経験を活かす、オールラウンダーな職種です。専門的なスキルや知識を持つスペシャリストとは対照的に、ジェネラリストは多岐にわたる分野での知識や経験を有することが求められます。各分野で蓄積した知識やスキルを活かし、さまざまなプロジェクトに参画して、業務を遂行します。広範囲な知識や経験により、チームメンバーをまとめたり、プロジェクト全体を円滑に進めることにも貢献できるでしょう。
キャリアパスとしては、さまざまな分野の知識や技術が求められる「フルスタックエンジニア」や「プロジェクトマネージャー」などがあります。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体をまとめ、進捗管理やクライアントとの打ち合わせなど、プロジェクトメンバーとコミュニケーションを取って、プロジェクト全体の指揮をする重要な役割です。人とコミュニケーションを取ることが得意な人や人材育成のやりがいを感じたい人にオススメの職種です。
スペシャリストのように、特定の分野に特化したエンジニアだけでなく、幅広い分野に対応できるエンジニアも、近年の技術の発展にともない必要とされています。
クラウドエンジニアのキャリアパスを決めるポイント
クラウドエンジニアが目指せる「スペシャリスト」「ジェネラリスト」の2つのキャリアパスについて紹介しました。とはいえ、実際に自分のキャリアパスを選択するためにはどうすればいいのか、悩む人も多いのではないでしょうか。ここでは、キャリアパスを決めるためのポイントを3つ紹介します。
自分自身の現状のスキルや興味がある分野の確認
自分が現状持っているスキルや興味があることをもとに、キャリアパスを決めるという方法もひとつの手です。クラウドエンジニアとしての業務を通じて、以下のように興味が派生していくこともあるでしょう。
「自分は技術面を学ぶことが好きだな」
「人とコミュニケーションを取ることや周囲の人をまとめることが得意だな」
「技術的なことだけでなく、管理職の業務も興味があるな」
現状の自分自身を分析することで、自分に合うキャリアパスを見つけることに繋がります。得意なことや苦手なことは人それぞれなので、自分に合わないキャリアパスを選択してしまうと、後々後悔してしまうかもしれません。今まで得てきた経験から、得意なことや苦手なことを書き出して再確認することで、理想のキャリアパスを導き出せるでしょう。
将来像を考える(どういった働き方をしたいかなど)
将来、自分がどういった働き方をしたいかという視点から、キャリアパスを考える方法もあります。コロナ禍では、リモートワークで業務を行う企業が多く見受けられました。クラウドエンジニアの場合、クラウド上のサーバーやシステムを扱える環境であれば、基本的にはリモートワークで対応が可能なため、出社をしないで業務を行うことが多いようです。リモートワークだと、自宅にひとりで黙々と業務ができるので、集中しやすいというメリットなどがあります。
しかし、オフィスと比較して同僚や上司と会話する機会が減るため、コミュニケーションが取れずにモチベーションが保ちにくいということもあります。また、職種によっては休みの日や働く場所も変わるため、自分がどういった働き方が合うのか、仕事を長く続けるためにも、よく考えて決める必要があります。
生涯どの程度の年収を得たいか考える
仕事をしていくうえで、年収を基準に考える人も多いのではないでしょうか。
2023年10月31日時点の求人ボックスのデータによると、クラウドエンジニアの平均年収は約596万円のため、日本の平均年収と比べると高い傾向にあります。全体の給与幅が306万円から992万円と幅広いため、勤務先や、持っているスキルや経験によって大きな差がある傾向です。転職サイトなどで平均年収をチェックしてキャリアを選ぶことで、年収に関して満足のいく結果が得られやすいでしょう。
参考:求人ボックス
クラウドエンジニアのキャリアパスに活かせるスキル
クラウドエンジニアがキャリアパスに活かせる、身につけておきたい知識やスキルは以下の5つです。
- クラウドサービスの知識・スキル
- サーバー・ネットワークの知識・スキル
- 仮想化に関するスキル
- コミュニケーション力
- CI/CDに関するスキル
クラウドサービスの知識・スキル
クラウドエンジニアにとっては、クラウド全般に関する知識とスキルは必要不可欠なものです。実際に行う業務は、AWSやGCP、Azureなどのクラウドサービスを使用して、クラウド環境の構築を行います。クライアントに最適なクラウドサービスを提案するためにも、クラウドの知識とスキルは最低限、身につけておきましょう。
サーバー・ネットワークの知識・スキル
クラウドエンジニアは、サーバーやネットワークの知識やスキルも欠かせないものです。サーバーやネットワークの最適化は、クラウド環境の効果的かつ効率的な運用を可能にするため、クラウド環境のインフラ構築にあたっては、重要な役割を果たします。最近ではLinuxが使われることが多く、Linuxに精通していることはクラウドエンジニアにとって不可欠な要素になっています。そのため、業界標準に準拠したスキルセットを有していること証明するためにも、「Linux技術者認定 LinuC」の資格を取得しておくことをオススメします。
仮想化に関するスキル
上述のサーバー・ネットワークの知識やスキルに含まれるものとして、仮想化技術に関してはとくに必須のスキルになります。仮想化とは、サーバーやネットワークなどのハードウェアリソースを、ソフトウェアを活用して統合、分割する技術です。1つのハードウェアを分割して、複数のハードウェアがあるように見せかけるなどのことができます。導入コストの削減やサーバー管理の一元化といった複数のメリットがあり、キャリアパスを広げるためにも必ず身につけておきたいスキルです。
コミュニケーション力
コミュニケーションスキルは、基本的にどのような業種でも必要不可欠なスキルといえるでしょう。クラウドエンジニアも例外ではなく、コミュニケーション力があることで、顧客が求めていることを上手く引き出せたり、チームメンバーと連携してプロジェクトを円滑に回すことに役立ちます。スペシャリスト、ジェネラリスト、マネジメントのどのキャリアパスでも欠かせないスキルです。
CI/CDに関するスキル
クラウドエンジニアとしてキャリアパスを広げるためにも、CI/CDに関するスキルも身につけておくと良いでしょう。CI/CDは(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)のことで、おもにソフトウェア開発の過程において自動化の考えを取り入れた開発手法を指します。たとえば、新しい機能を追加したり変更した際、自動でテストを行い、プログラムのバグなどをすぐに見つけて修復するなどのことができます。CI/CDを活用することで、素早い開発を行うことができるため、ぜひ身につけておきましょう。
クラウドエンジニアのキャリアパスに活かせる資格6選
クラウドエンジニアがキャリアパスに活かせる、取得しておきたい資格は以下の6つです。
- AWS認定
- Google Cloud認定資格
- Microsoft Azure認定資格
- Linux技術者認定 LinuC
- LPIC
- ネットワークスペシャリスト
AWS認定
AWS認定は、Amazon社のクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)の知識やスキルを学ぶことのできる認定資格です。AWSの認定は全部で12種類あり、4つの領域があります。
初級レベル(全1種)
- クラウドプラクティショナー
中級レベル(全3種)
- ソリューションアーキテクト
- SysOpsアドミニストレーター
- デベロッパー
上級レベル(全2種)
- ソリューションアーキテクト
- DevOpsエンジニア
専門知識(全6種)
- セキュリティ
- ビッグデータ
- 高度なネットワーキング
- Alexaスキルビルダー
- 機械学習
- データベース
これからクラウドの知識を身につけたいという人は、初級のクラウドプラクティショナーの認定資格から始めましょう。AWSやクラウド全般の基礎知識を学ぶことができるため、オススメです。今後クラウドエンジニアとして活躍していきたい人は、まずは初級の認定資格から受験してみて、経験を積むごとに中級以上の認定資格にも挑戦してみましょう。
Google Cloud認定資格
Google Cloud認定資格は、Google社が提供しているGoogle Cloudに関する認定資格です。Google Cloud認定は、2023年現在で全11種類あり、3つの領域があります。
初級レベル(全1種)
- Cloud Digital Leader
中級レベル(全1種)
- Associate Cloud Engineer
上級レベル(全9種)
- Professional Cloud Architect
- Professional Cloud Database Enginee
- Professional Cloud Developer
- Professional Data Engineer
- Professional Cloud DevOps Engineer
- Professional Cloud Security Engineer
- Professional Cloud Network Engineer
- Professional Coogle Workspace Administrator
- Professional Machine Learning Engineer
AWSの認定資格と同様に初級から上級までありますが、Google Cloudサービスを活用した設計、運用、管理スキルをはかる中級資格の「Associate Cloud Engineer」が、クラウドエンジニアの基礎知識を身に付けられる認定資格です。
ただし、あくまでも「Associate Cloud Engineer」の認定資格は、クラウドエンジニアの基礎知識になるので、クラウドエンジニアのスペシャリストを目指すなら、上級の認定資格がオススメです。
Microsoft Azure認定資格
Microsoft Azureの認定資格は、Microsoft社が認定しているAzureに関する認定資格で、Azureクラウドプラットフォームのスキルと知識を証明するものです。Microsoft Azure認定資格は現時点では、全18種類の認定資格があります。
初級レベル(全3種)
- Azure fundamentals(AZ-900)
- Azure AI fundamentals(AI-900)
- Azure Data fundamentals(DP-900)
中級レベル(全10種)
- Azure Administrator Associate(AZ-104)
- Azure Developer Associate(AZ-204)
- Azure Security Engineer Associate(AZ-500)
- Azure Network Engineer Associate(AZ-700)
- Windows Server Hybrid Administrator Associate(AZ-800、AZ-801)
- Azure AI Engineer Associate(AI-102)
- Azure Data Scientist Associate(DP-100)
- Azure Data Engineer Associate(DP-203)
- Azure Database Administrator Associate(DP-300)
- Azure Enterprise Data Analyst Associate(DP-500)
上級レベル(全5種)
- DevOps Engineer Expert(AZ-400)
- Azure Solutions Architect Expert(AZ-305)
- Azure for SAP Workloads Specialty(AZ-120)
- Azure Virtual Desktop Specialty(AZ-140)
- Azure Cosmos DB Developer Specialty(DP-420)
Azureの認定資格は種類が多いですが、クラウドの概念や基礎的なAzureのサービスや機能などについて学べる「Azure fundamentals(AZ-900)」の認定資格から取得するのが良いでしょう。初級レベルの「Azure fundamentals(AZ-900)」の認定資格取得後は、自分が目指しているキャリアに合わせて中級以上の認定資格に挑戦するのも良いでしょう。
Linux技術者認定 LinuC
Linux技術者認定試験(LinuC)は、Linuxスキルの保持を証明することができる資格です。サーバーの仮想化にも使われるLinuxは、クラウドエンジニアにとっては非常に重要なスキルのため、ぜひともおさえておきたい試験です。Linux技術者認定試験(LinuC)は現時点では、全4つのレベルがあります。
Linux技術者認定試験(LinuC)(全4種)
- LinuCレベル1
- LinuCレベル2
- LinuCレベル3
- LinuCシステムアーキテクト
コンピューターシステムを理解し、仮想環境を含むLinuxシステムの基本操作とシステム管理が行えるエンジニアの証明となるのが「LinuCレベル1」となりますので、初めて学ぶ人は「LinuCレベル1」から受験してみるのが良いでしょう。
LPIC
LPICは、Linux技術者認定試験(LinuC)と同じく、Linuxスキルの保持を証明することができる資格です。LinuCとの大きな違いとしては、LinuCは国内で求められるスキルを問われる日本市場に特化した資格なのに対して、LPICは資格の適用範囲が世界標準という点です。試験の内容や難易度に大きな違いはないと言われており、LPICの試験は下記の通り3段階に分かれております。
LPIC(全3種)
- LPIC1(Level1)101試験、102試験
- LPIC2(Level2)201試験、202試験
- LPIC3(Level3)300試験、303試験、305試験、306試験
Level1とLevel2の試験については、101と102、201と202、それぞれ両方合格する必要があります。Level3の試験については、上記4つの内いずれか1つ合格すれば、Level3の資格を取得したことになるため、Level2の方が難しいと思う人も多いようです。
今後転職を考えていたり、将来のキャリアパスの可能性を広げられる資格は、世界的なシェアも受けているLPICの資格になりますので、LinuCの資格とどちらを受験するか悩んでいる方はLPICの資格を取得してみるのが良いでしょう。
ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリストは、クラウドエンジニアには欠かせないネットワークに特化した国家資格です。ネットワークスペシャリスト ドットコムの合格率によると、令和5年度春の合格率は14.3%となっており、毎年約14%前後とかなり難易度の高い国家資格になります。
ネットワークに関する専門的な知識を持っているという証明にもなるため、クラウドエンジニアがキャリアアップするためにオススメな資格です。
参考:ネットワークスペシャリスト ドットコム
まとめ
今回は、クラウドエンジニアのキャリアパスや活かせるスキル資格について解説しました。近年、クラウドエンジニアの需要が高まってきているので、クラウドエンジニアとして活躍していきたいと思う人も増えていくでしょう。将来、自分がどういった働き方をしていきたいか、得意なことや興味のあることは人それぞれ違うかと思います。キャリアパスを実現するために、まずは自分自身の現状を知るために自己分析をして、資格勉強などを行いつつ、業務に臨みましょう。