精神障がいがある場合、さまざまな場面で日常生活に影響を及ぼすことがあります。
そのため精神障がい者に交付される「精神障害者手帳」を保有することで、日常生活における支援やサービスを受けることができます。また、就労を検討している場合、障がい者雇用枠の利用も可能になるでしょう。
今回は、障がい者雇用制度を利用するうえで知っておきたい、精神障害者手帳の対象になる症状や等級について紹介します。
▼目次

精神障害者手帳とは?
「障害者手帳」は障がいのある方が交付される手帳で、交通機関や納税などで控除を受けられるというメリットがあります。保有しておくことで「障がい者雇用枠」での就労も可能です。障がいを抱えながらの就労を希望する場合には、保持しておくと安心でしょう。
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障がい者手帳には様々な種類があり、その中でも「精神障害者手帳(正式名称:精神障害者保健福祉手帳)」とは、精神の障がい症状が見られる方に交付される手帳です。
日常生活や社会生活において、援助や支援が必要になるケースもある精神障がいがある場合には申請を行い、支給される手続きをとっておきましょう。
精神障害者手帳の対象になる症状
- 統合失調症
- うつ病や双極性障がい
- てんかん
- 依存症状(薬物中毒やアルコール中毒など)
- 高次脳機能障害
- 発達障がいの症状(自閉症や学習障がい、ADHDなど)
- そのほかストレスを起因とする障がいなど
精神障害者手帳は、症状によって日常生活への支障や制約がかかってしまう状況になりやすい方が対象ですが、知的障がいによる精神疾患は対象外となります。
自分が精神障害者手帳の申請に該当しているか否かについて、事前に把握しておきましょう。
精神障害者手帳を保有すると受けられるサポート
障がい者手帳を保持していると、全国一律で受けられるサポートや地域・民間事業によって支援するサービスを利用できるメリットがあります。どのような援助・支援サービスがあるのか、詳しくみていきましょう。
全国一律の支援サービス
公共料金の控除 | ・ NHKの受信料の控除 |
納税の控除 | ・ 税金(所得税・住民税)や相続税などの控除 ・ 自動車税の控除(1級のみ) ・ 自動車取得税の控除(1級のみ) |
生活福祉資金のサポート | ・ 障がい者職場適応訓練 など |
地域や民間事業のよる支援サービス
公共料金関連のサービス | 下記公共機関において割引が適用 ・ 公共交通機関の運賃(バス、タクシー、電車など) ・ 通信費(携帯電話など) ・ 上下水道料金 ・ 医療費の助成 ・ 入場料(公共施設において) |
サービス手当 | ・ 福祉手当 ・ 軽自動車税の控除 |
その他 | ・ 優先入居の対象(公営住宅) |
手帳を保有しておくことで、公的機関・料金の控除を受けることができます。詳しくはお住いの地域の情報を確認してみましょう。
精神障害者手帳の等級(1級・2級・3級)について
症状の程度によって等級(1級・2級・3級)で区分されており、診断書をもとに「能力面」・「精神面」の症状によって審査が行われます。最も症状が重い場合には、等級は1級となり、日常生活のサポートを受けられる内容も変わってきます。自分がどの等級にあたるのかを事前に理解しておきましょう。
等級の種類・区分
1級:日常生活において他者の介入がなければ難しい場合
例)第三者の援助がないと外出が困難、他者との交流ができず引きこもる、食事や家事などの介入が必要 など
2級:労働は難しく日常生活に支障がある
例)日常生活(食事や清潔保持など)で助言を必要とする場面がある、金銭管理が困難、外出先でのストレスへの対処が一人でできない
3級:一人で外出等はできるが、日常生活に支障がある
例)日常生活は一人でできるが、イレギュラーなケースへの対処は困難、企業側の理解・支援・配慮があれば労働は可能
等級の判断としては一人でどの程度の日常生活を過ごせるか、他者とどの程度の交流が図れるか、症状の悪化・再燃の程度などが考慮されます。
精神障害者手帳の2級と3級の違いとは?
3階級ある等級のうち、2級と3級にはどのような違いがあるのでしょうか。「精神疾患」・「活動制限」において詳しく見ていきましょう。
2級 | 3級 | |
---|---|---|
共通症状 | ・思考障がい、妄想、幻覚が見受けられる ・てんかんの発作が頻繁に反復して起こる | |
精神疾患 | ・人格が変化しやすい ・気分や意欲などに障がいがでる期間が頻繁に起こる ・認知症やそのほかの精神神経の障がい症状がある | ・人格は変化しにくい ・気分や意欲などに障がいがでる期間が頻繁に起こるが、症状は軽度 ・認知症は軽度だが、そのほかの精神神経の障がい症状がある |
活動制限 | 第三者の援助がないと日常生活に支障がでる | ある程度は一人でこなせるが、場合によっては第三者の支援が必要 |
できること | ・通院などの習慣的な外出はできる ・訓練所や支援事業所、デイケアなどの利用は可能 ・他者との交流は困難だが、引きこもるケースは少ない | ・衛生面の管理(洗面・入浴・着替え・清掃など)ができる ・他者との交流や協調性がある ・金銭管理やショッピングが可能 |
できないこと | ・適切な言動ができない場面が多く、他人よりも行動が遅い ・衛生面で自立的な行動が取れない ・適切な食事ができない ・外出時のストレスへの対処ができない | ・重度なストレスに感じる場面に遭遇すると対処できないことがある ・日常生活でイレギュラーなことに柔軟に対処できない ・状況によっては適切な言動ができないことがある |
3級は2級と比較すると、自発的に日常生活に必要な行動や判断ができますが、重度なストレスや想定外のことが発生した場合への対処が困難なケースがあります。
2級は3級と比較すると、日常生活における判断を自発的にできないケースが多く、多くの場面において、第三者の援助を必要とする場面が見受けられます。
2級は3級よりも障がいの症状が重いため、3級では受けることのできないサービスを利用できることが違いとして挙げられます。
また、3級では通院や服薬が必ずしも必須ではありませんが、2級の場合には通院や服薬を必要とします。
精神障害者手帳の申請手続き
精神障害者手帳の申請は、市区町村で行います。
申請には、「申請書」・「診断書」もしくは「障がい年金の証明書の写し(受給している場合)」・「本人写真」が必要になります。本人が申請窓口へ出向くことができない場合には、代理申請も可能です。(家族や医療関係者など)
申請後に審査を通して認定されると交付される流れとなります。精神障害者手帳の有効期間は、2年です(経過する月の末日)。更新には、改めて診断書と障がい年金の証明書を必要とします。
まとめ
今回は、精神障害者手帳について解説してきました。障がいの症状によって認定される等級は異なります。
また等級が上がるほどに、自発的に活動することが困難で、第三者からの介助も必要となるほか、等級によって受けられるサービスも変わってくるなどの違いがあります。 交付には、医師の診断も必要なため、事前にしっかりとかかりつけ医に相談しておくことも大切なポイントです。医師側が適切な判断ができるよう、症状については包み隠さず話しておくようにしましょう。